先週、3年間にわたる産業界との議論がようやく実を結び、欧州規格EN45554が制定されました。EN45554は、「エネルギー関連製品の修理・再利用・アップグレードの評価に関する一般的な方法」を定めた公式文書です。分かりやすく説明すると、修理のしやすさを測るための規格で、公正に修理をするための戦いにとっても、大きなマイルストーンと言えます。
なぜEN45554は大きな影響を与えるのでしょうか?
私たちは、自分たちが所有しているものを自分で修理して、より長く使いたいと思っています。私たちがお金を出して買ったものに、それなりの価値を求めているだけでなく、新しい製品を製造することは気候変動の大きな要因であり、過小評価されているという点でも重要です。地球の温暖化をくい止めるには、使い捨て電子製品の製造を止めるだけでなく、長く使えるように修理をしなければなりません。早急なアクションが必要です。
問題は、産業界が自分たちだけで実現できないことです。経営者たちは、四半期ごとに売上を伸ばさなければならず、製品の寿命を延ばすことは除外されます。だからこそ政府が法律で介入し、修理不可能な製品の販売を禁止し、消費者(あなたも)自身が耐久性のある製品を選別して、より良い購入ができるようにする必要があるのです。そしてEUでは、政治指導者たちがその準備を進めています。
しかし悩ましいのは、政界リーダーたちは「修理可能な製品」とは何か知りません。メーカーに聞けば、自社の製品は修理可能ですと答えるはずです。私たちに言わせれば、明らかに修理可能なデバイスもあれば、全く修理不可能なものもあります。

そこで、リペアビリティを規制するには、製品が修理しやすいデザインであるか測定できる、一般的に受け入れられる指標が必要です。これはCEN-CENELECのワーキンググループが過去3年間に渡って検討してきたものです。私は、そのワーキンググループのメンバーとして、また私たちの地球を代表して参加してきました。(そして地球もリペアビリティの標準化を専門とする環境団体ECOSを通じて、私を推薦してくれました)
リペアビリティの規格化について、製品に応じて基準や方法を選択できるツールボックスのようなものにすると、予め決められていました。まず物理的なパーツやコード(ファームウェアやソフトウェア)など、製品のどの部分に焦点を当てて評価するかという基準を定めました。次にリペアビリティに関する様々な項目を抽出しました。あるデバイスでは、製品を解体するために必要なツールやネジの種類など、製品自体の特性です。また、トラブルシューティングのサポート、スペアパーツや情報の提供など、アフターサービスに関するものもあります。

上のように、これら全ての項目をカバーするスコアチャートを作成しました。そして評価する製品のタイプを配慮して、それに合わせた基準を設定し、特定のパラメーターをリペアビリティスコアに落とし込むための、柔軟な集計式を考え出しました。
これら全ての項目に関するコンセンサスを得ることは容易ではありませんでした。各々の項目で激しい議論が交わされました。ほぼすべての用語についても議論が繰り広げられました。さらに、このワーキンググループにはメーカーの代表者たちで大半が占められていました。自社の製品やサービスを向上させようとする人もいれば、自分たちが作っているものがきちんと評価されているかどうか確認したい人もいました。率直に言って、このプロセスを妨害しようとしている人もいたのが実情です。
それにも関わらず、変化を求める私たちは推し進めました。提案に次ぐ提案を行った挙句に、草案の幾つかが各国の代表によって却下されたこともあります。しかし2019年11月、ついにこの草案が承認され、リペアビリティ:修理のしやすさを評価する公式な基準が完成しました。
これは画期的なことです。これまでで初めて、リペアビリティに関する私たちの見解が、iFixitの意見だけのものではなくなりました。その代わり、EUは修理を選択肢に入れた時の指標(ハイアラキー)を表示することを広く認めてきています。例えば、製品内部を開けようとしたときに固定用クリップが壊れてしまうと、その製品は修理不可能と評価されます。また特殊なネジを使っている製品は、修理不向きとして評価されます。メーカーが正規修理ネットワークとサービスマニュアルを共有する場合、この対応だけでは不十分と評価されます。もし本当に自分たちの製品をユーザーに修理してもらいたいのなら、彼らに交換用パーツを提供しなければなりません。
iFixitでは何年も前から言い続けてきたことですが、ようやく体現化してきました。
ここで終わりではありません。このツールボックスを実際の現場に適用させてみる必要があります。ここで決められた標準的なルールを製品タイプ毎にどうやって適用させていくべきか、また製品ごとに異なる様々な基準を、どのように重点化していくかは、今後の議論によって決定されます。その際には、私たちも意見を述べることになります。
フランスでは2021年、リペアビリティのラベル表示が義務化されました。ヨーロッパの”修理する権利”キャンペーンでは、EUで販売される全製品に同様のラベルを付け、壊れたら修理できる製品を選べることを推進しています。EUのリペアビリティ公式ラベルを最初に取得する製品は何であるべきか意見を求められるなら、真っ先にスマートフォンと答えるでしょう。(それが実現するまで、iFixitで公開しているスマートフォンのリペアビリティスコアを参照してください)さらに修理可能なスマートフォンを選ぶだけでなく、修理が必要になった時に、必要な部品を入手できる法的な権利があることが望まれます。
数年後、お気に入りのスマートフォンを落として破損した時のことを思い浮かべてください。修理するか、それとも買い替えなければならないか、その判断はメーカーに委ねるのがいいのでしょうか。それとも自分で選択できるべきでしょうか?あなたが自分で決められる立場でいたいのなら、全てのスマートフォンを修理可能にすることを求める請願書に署名してください。私たちは、今回のワーキンググループで策定した基準をもとに、スマートフォンの製造メーカーが遵守すべきリペアビリティの要件を設定する予定です。

”修理しやすさ “の意味を理解した今、もう言い訳はできません。今こそ、「修理可能な未来」を実現する時です!
*このブログはMidori Doiによって翻訳されました。
0 opmerkingen