Bloombergは今年初め、AppleがiPhoneのサブスクリプションサービスに取り組んでいると報じました。月々の料金を支払えば、iPhoneを購入する代わりにリースができるようになります。先週、Fairphoneはオランダの顧客向けに同様の定額制プランを発表しました。Fairphoneは交換が簡単なバッテリーとアップグレード可能なストレージを搭載していて、リペアビリティスコアは常に上位、言うまでもなく、私たちはFairphoneの大ファンです。しかしながら、ハードウェアのサブスクリプションへのサービス移行はあまり喜ばしいものではありません。
携帯電話の定額制サービスによって、あらゆるものが定額制になってしまうのが嫌というわけではありませんが、「修理ができないなら、これを所有していない」という言い回しがあります。その逆もしかりで、「所有していないのなら、修理もできない」のです。
スマートフォン向け定額制プログラムの仕組み

携帯電話のサブスクリプションプログラムの仕組みは簡単です。月々の料金を支払えば、携帯電話が使用できます。またプログラムによっては、他のサービスも一緒に受けることもできます。例えば、Fairphoneはバッテリーやスクリーンの交換を提供しています。契約終了後は、デバイスを返却します。
このサブスクリプションのトレンドはどこから来ているのでしょうか?近年、スマートフォンのアップグレードサイクルが長くなっています。iPhoneが登場した当初、ユーザーは平均して約18カ月毎に新モデルに買い替えていましたが、今では4年毎に伸びました。私たちが携帯電話を使い続ける期間が1年長くなると、平均して636,000台の自動車から排出される二酸化炭素排出量の削減に相当します。しかし次のアップグレードまでの期間が長くなれば、企業は減収となるので、安定した収入源を模索するのは当然のことです。投資家は予測可能な利益を好みますし、ハードウェアのサブスクリプションモデルは、メーカーが収益を確保するのに役立ちます。
Appleの場合、iPhoneのサブスクリプションモデルの導入は当然、理にかなっています。iPhoneのサブスクリプションモデルは一定の収益源を確保し、顧客が他メーカーの携帯電話に乗り換えないようにするインセンティブを付けています。使用を終えたデバイスは回収整備して、中古携帯電話市場で販売できます。
リース後の所有権移転システムよりサブスクリプションの方がタチが悪い
Appleのエコシステムに加入している人たちは、「Appleには既にiPhoneのサブスクリプションサービス、iPhoneアップグレードプログラムがあるじゃないか」と言うかもしれません。アメリカ、イギリス、日本、中国などの地域ではiPhoneを月額料金で購入することができます。そして、携帯キャリア会社の多くが、定期的なアップグレードの仕組みを入れた分割払いプログラムを提供しています。Googleは「Pixel Pass」を提供しています。
デバイスを所有すれば、子供に譲ったり、売ったり、ベビーモニターとして使用したりすることができます。
これらのプログラムはデバイスの金額を分割で支払い、契約期間が終了するとデバイスを所有することになります。希望すれば、契約の条件に従ってモデルをアップグレードできますが、それよりも家族に譲ったり、どこかで販売したり、ベビーモニターとして使用することもできます。さらに殆どのプログラムでは、サブスクリプション中の残高を支払えば、契約から抜け出すことができます。
抜け出せない”究極の罠”
一方、サブスクリプションモデルは月額課金制で、契約終了後に”所有者”となるメリットはありません。iPhoneを所有するのと同じように、iPhoneのアプリケーションやサービスに縛られることになりますが、それでも所有ではありません。MacWorldのマイケル・サイモン氏は、このAppleのプログラムを「抜け出せない究極の罠」と呼んでいます。
Appleはあなたの新しい大家さんです。配慮があり、メンテナンスに気を配ってくれる大家さんであれば、賃貸の方が所有するより簡単な場合もあります。そうでない場合、賃貸の方が簡単です。投資家の息がかかった大家さんがいて、毎年アパートを修繕を口実に家賃を上げてくる……それでは、家とは思えなくなります。
携帯電話のサブスクリプションプランに価値がない理由
サブスクリプションプランは、リース後に所有するシステムや買い取りよりも、次の主な3つの理由で最悪です。
- 長い目で見ると、割高になることが多い。
- 修理の選択肢が制限され、DIY修理や修理業者を自分で選べない。
- 修理代が高額になる。
長期的にはより高額に
MacWorldは、おそらくAppleのサブスクリプションプランは、契約者が少なくもデバイスの金額の支払いを終えるまでモデルをアップグレードできないだろうと予測しています。Fairphoneは、毎年新しいモデルを発表しておらず、リース契約にはアップグレード割引が含まれていないため、詳細についてあまり明確ではありません。Fairphoneはこれまで、モデル間でアップグレードモジュールをリリースしており、アップグレードされたカメラやその他のモジュールを発売した際には、追加料金で契約者に提供しています。
しかし現状では、Fairphoneのサブスクリプションプランは、長期的に見ると新品を購入するよりも割高です。ユーザーが修理サービスを利用しない場合、1年ごとに月額支払額の割引を行っています。例えば1年間修理をしなかった場合、毎月あたり2ユーロ、2年目では4ユーロというように割引が適用されます。この割引を利用したとしても、5年間で総額996ユーロを支払うことになり、デバイス自体を購入した場合よりも280ユーロも高くなります。その上、期間終了時にデバイスの所有権を持つことができません。
限られた修理オプション
リースモデルは、長期的に見ると割高なだけではありません。あなたが所有していないなら、メーカーは自分で修理することを法的に制限することができます。マイクロソルダリングを習得したJessa Jones氏のように、子供が誤ってトイレに落としたiPhoneを回復できるわけではありません。Hugh Jeffreys氏のデュアルSIMを搭載した改造版iPhone 12ようなハードウェアのアップグレードも不可能です。
自分の携帯電話の内側に興味がない人は、「だからどうした?」と思うでしょう。Fairphoneのサブスクリプションサービスには、1年に1回のスクリーンもしくはバッテリーの交換が含まれますが、追加の修理費用は月額支払い料に加算されます。
Appleストアで「修理は不可能」と言われたiPhoneユーザーが、地元の修理ショップに持ち込んだところ、安価ですぐに修理できたという話はよく耳にします。
修理サービスを含むプログラムであっても、修理対象となるかの判断だけでなく、修理をすぐにしてくれるかもメーカーが決定します。スクリーンの小さな擦り傷だけでは、メーカーが修理を拒否したという報告例も少なくありません。Fairphoneのサブスクリプションサービスは、水濡れ、”明らかな乱用の証拠”、あなたがケースを取り外した形跡がない場合にのみ、修理を保証します。Apple Storeで「修理は無理」と言われたのに、独立系の修理店で簡単に安く修理できたというiPhoneユーザーからの声はよく聞きます。買い替えやリース後に所有した場合、メーカーから”修理は不可能”、破損は自分責任、プランの対象外、と言われた時でも選択肢は残されてます。しかしサブスクリプションプログラムに加入していれは、そうはいきません。
修理の独占が修理費を押し上げる
DIY修理に興味のない人にとっても、定額制はアップグレードへのプレッシャーがあり、スマートフォンに対する権利が限定され、誰にとっても修理費が高くなります。現在、メーカーが許可せず違法としているほぼ全ての修理が、サブスクリプションサービスの下では修理の制限が合法となるでしょう。例えば、あなたがデバイス内部を開いてしまった場合、保証は無効になります(現在、必ずしもそうではありません)。またメーカーは修理費用を自由に設定できます。独立した修理技術者を完全に除外し、価格を低く抑えようとする市場からの圧力に対抗することができます。(Nikonモデルを参照) リースされたデバイスの修理を独占することは違法とはなりません。
より多くのメーカーの説明責任 vs さらなる採掘
レンタルプログラムには、環境面を考慮すると大きなメリットがあります。それは、メーカーのハードウェアに対する責任が拡大されるからです。つまり、メーカーはレンタルプログラムで使用される全てのデバイスを再生化しなければなりません。再整備できるものは再整備し、できないものはリサイクルすることになります。使われなくなった多くのデバイスが何年も引き出しに入れられたり、廃棄されています。本来なら整備済み市場を拡充することができるはずなので、望ましいことです。
しかしながら、携帯電話が環境に与える最大のインパクトは、その採掘と製造にあります。短期間でのアップグレードを促すリースモデルは、もっと新しいデバイスを、もっと多くの採掘を、結果として多くの廃棄物が発生します。インセンティブがない場合でも、毎月送られてくる明細書には携帯電話の有効期限をちらつかせています。そして、メーカーが携帯電話を回収するとき、環境を配慮しているのでしょうか?それとも利益が優先でしょうか?携帯電話を再生するよりもシュレッダーで処分する方が多ければ、たとえアップグレードを促す賄賂を渡していなくても、純粋にマイナスです。より速い消費サイクルと大量の廃棄物は、地球にとって悪いニュースです。
ロックされたデバイス=私たちの学びを制限
ハードウェアをリースする未来には、もう一つ、陰湿な副作用があるかもしれません。所有している物の内部に触れられないと、どのように機能するのか学ぶのは非常に難しいものです。
修理は、人々に物が動く仕組みを知りたいという好奇心を掻き立てます。
Tarah Wheeler, Security Expert
多くのエンジニアがまず分解することから始めています。Mythbustersで有名なAdam Savage氏は、子供のころに電子機器をいじった経験が、現在のメーカー、エンジニア、DIY修理愛好家になるきっかけになったとよく話しています。もし私たちの所有物がレンタル契約や修理制限の陰に隠れてしまうと、セキュリティ専門家のTarah Wheeler氏は「物の仕組みを知りたい好奇心のある人々」を刺激することが難しくなるのではないかと心配しています。
修理はエンジニアリングを学ぶもので、サブスクリプションはそのような機会/学習を妨げるものです。
あなたがそれを所有していれば、修理することができます。
修理に関するメーカーの締め付けを考えると、The Repair AssociationのGay Gordon-Byrne氏は、”レンタルというコンセプトは、所有権という利点を持たせずに販売しているふりをするより良心的である”と指摘します。 しかしAppleはあなたに携帯電話を所有することを確約しながらも、所有者の権利を奪っているのは残念です。そして、AppleやFairphoneのように、利益よりもユーザーや地球環境の優先を公言している企業にとって、これは望ましいことではありません。
所有することが持つ意味を見失わないようにしましょう。所有していれば、修理することができます。その上、修理が可能にするハードウェアの制御と工学的発見の可能性を手に入れることができます。その未来を、メーカーに奪われないでください。
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